オーディオ評論家 林 正儀 先生より Λ8.24 for Digital の評価を頂きました

オーディオ評論家 林 正儀 先生 Masanori Hayashi

A i T E C から「オンリーワン」再び!

       真の意味での「インシュレーター」

真の意味での「インシュレーター」・静電気や磁界からも絶縁するアクセサリー

 AiTECほど「オンリーワン」にこだわりを持つアクセサリーブランドはないと思う。電源フレッシャーのΛ(ラムダ)5・3シリーズや、置くだけでルーム環境を一新させるΛ3・16。接点革命といえるコネクトパテΛ1・2など、これまで誰もが考えつかない、世界のどこにもなかったアイテムを開発し、目覚ましい音質改善効果で、ユーザーに熱く支持され続けてきた。ライヴや録音現場での使用実績もあるなど、その信頼性の高さは折り紙つきである。そんなAiTECの最新製品となるのが、Λ8・24と名づけられた新時代のインシュレーターだ。「インシュレーターって振動とか共振対策だろ?」。そう読者が思うのは当然だが、本来は「絶縁」の意味である。
 時代はデジタル。「振動対策もですが、静電気や磁界からの絶縁対策がより重要です(河西秀明氏)」というコンセプトのもと誕生したのが、〝for Digital〟を謳う本アイテムなのだ。個人的に期待度も高く、今回は初めて諏訪湖畔のAiTEC本社を訪ねることにした。 到着してみると、AiTECの試聴室はなんと蔵の中。とにかく新鮮だ。そこで見たΛ8・24は、コンパクトなブルーのナイロン系樹脂ボディで、底部がベークライト。受け側にはシリコンの頭がついた、至ってシンプルな構成である。「どこにそんな秘密が?」という見た目の印象だが、これまでのAiTEC製品と同様に〝論より証拠〟。理屈抜きにまずは聴いてみなければ……


吟味を重ねた素材と驚異的な生産行程


 用意されたシステムはネットワークオーディオである。「アンプなど、全部で13カ所にΛ8・24をセットしています」と河西氏。早速、ウイリアムス浩子のハイレゾ音源がかかった。その一瞬で、部屋に録音現場のフレッシュな空気が流れた。歌もギターもスピーカーを離れ、生音かと錯覚するほどだ。河西氏は「試しに1カ所を外しましょう」と、最も影響が少ないという電源タップの下からΛ8・24を外す。ただそれだけで、音が固まって壁にはりついた。私は「すぐに戻して」と口にしたほどである。
 では種明かしをしていこう。「絶縁対策のためのオンリーワンのこだわりは、素材や製作精度、組み立てなど全てにわたっています」 と河西氏。ありとあらゆる素材に挑戦し、金属からからはじまって試行錯誤。最終的にこの素材、この形に辿りついたそうだ。
 まず樹脂のボディ。誰もが旋盤で丸棒から加工したと思うだろう。でも違う。それは周囲のスジを見れば明らかで、横方向じゃなく何と微細な縦スジが……。ということは、製品が固定され刃物が動いているということ。熟練工がブロックから一個一個、マシニングセンタで削り出したものなのだ。
 底部のベークライトも薄い板の貼りつけではない。樹脂の内部を1/3ほどくりぬき、同時加工・同じ温度で高精度に圧入。二つの異なったメイン素材の特性を最大限生かすため、接着材を使わないこともすごいと思う。
 たかがインシュレーター1個に(失礼)、何でここまで手間と時間をかけるのか。こだわりついでに、なぜブルーなのかも聞いてみると、「本当は黒くしたかったんです。でも塗装をしても材料を変えても、何をやってもだめだった」と河西氏。黒のツヤ消し、光沢バージョンなどさまざまな仕上げの試作品を見せてもらったが、微妙に原音からずれてしまうそうだ。「原音を一切変えない」という開発ポリシーから選ばれたのは唯一本品のみ。素材色のブルーということだ。さて気になるΛ8・24のプライスだが、これも衝撃的。3個1組/1万8000円(税別)。これまでのΛシリーズからすると、購入へのハードルがぐんと低い。AiTEC入門にナイスマッチといえる。



原音を変えずに劇的なまでの効果を発揮する注目アイテム


劇的にS/Nや解像力、余韻感が変わる


さらに詳細な内容は例によって非公開だが、機器に敷くだけで効果はテキメン。確かに静電気や高周波的なノイズを上手くインシュレーションしてくれるようだ。
 では具体的にどんな効果として現れるのか。ウィリアムス浩子の『ア・ウィッシュ』は、たまたま録音に立ち会ったから分かりやすい。素直な録り方が気持ち良く、ナチュラルに再生されればベターだが、比較的影響が少ないはずの電源タップでも、Λ8・24の有無の差は大きいのだ。
 飛び上がるほど強烈に効くのが、NASやルーターだった。予想どおりというか、さまざまなやり取りをするネットオーディオの心臓部らしく、各機種自身がノイズを発生させているのだ。これはPCも同様で、劇的にS/Nや微細音の解像力、余韻感が変わる。クラシックピアノや室内楽。そしてジャズ、ボサノヴァや、ライヴに行ったこともある和楽器ユニット、AUN Jも、まるで別ものの演奏や音楽になる。三味線のキレや太鼓のアタックにふるえがきた。我が家では、USB DACのQB─9 DSDで試したところ、ハイレゾの空気感がさらにおいしく、情報量も激増。女性ヴォーカルの妖艶さ、ジャズのディープな空気もゴキゲンで、さらにバージョンアップしたような錯覚だ。NASははっきりノイズフロアが下がって、透明度が大きくアップ。CDプレーヤーや、アンプもニューフォースのようなデジタル増幅であればさらに〝for Digital〟の強みが増すようで、コイツは手放せない。
 わくわくするのがアナログ再生だ。LP12やたまたま手元にあったTEACの廉価なフォノイコライザー内蔵プレーヤーで試してみると、濁りや雑味感が解消。音にひろがりや厚みも加わって、アナログ本来の楽しさが味わえた。

〝for Digital〟は確かにそのとおりで、ネットオーディオやUSBオーディオ環境での使い勝手の良さや、圧倒的なパフォーマンスには目を見張るものがある。、また、デジタルコンポーネント以外でも、実は想定外の面白さがある。その筆頭はターンテーブルや単体フォノイコ、MCトランスなどのアナログ系だ。21㎏/3個という耐荷重に気をつければ、アナログのアンプやFMチューナーなどもいけるはずだ。これから試す予定だが、意外とヴィンテージ系のコンポーネントが蘇ったりして……。このように適応ジャンルの広さと手軽な価格から、広く誰にでもお薦めできる、これからが旬の大注目アイテムだ。8月24日の発売が待たれる!